日本エネルギー学会 バイオマス部会
バイオマス部会長からのご挨拶
  鮫島 正浩
   
  東京大学大学院農学生命科学研究科

 この度、森林総研の山本幸一氏の後を受けてバイオマス部会の第7代部会長を拝命いたしました。そこで、挨拶を書くに当たって部会のホームページをまず一読させていただきましたが、まず驚きましたことは、本年4月13日現在、部会メンバーの総数がなんと1034名であると知ったことです。これは大変な人数です。さらに人数だけではなく、産学官民の様々な立場と分野の方々によって部会が構成されていることにも目を見張らされました。あらためて「バイオマス」というキーワードが持つ不思議な力と繋がり、さらに与えられた責務の重さを強く感じ取っている次第です。

 バイオマス部会のホームページには歴代の部会長挨拶も掲載されていますが、これを時系列的に読んで行きますと、部会の歴史とそれぞれの時代との関わり合いを良く理解することができます。バイオマス部会が立ち上げられたのは1999年と聞いておりますが、その年には、米国のクリントン大統領がバイオマスのエネルギー利用を国の重要な戦略とする大統領令を発しております。初代会長の横山伸也先生が日本エネルギー学会の中にバイオマス部会を発足させましたことは、まさに時宜を捕らえた対応と言えるかと思っております。その後、我が国でも、2002年にはバイオマスニッポン総合戦略が打ち立てられ、バイオマス利活用の推進に向けた研究開発や実証事業等が盛んに行われるようになりましたが、この様子は第2代部会長の山地憲治先生(2005年)や第3代部会長の坂志朗先生(2008年)のご挨拶から読み取ることが出来ます。また、第4代部会長の堀尾正靱先生(2009年)のご挨拶では、我が国の国土の67%を占める森林から得られる木質バイオマスのエネルギー利用に基づく地域の活性化を例に取り上げ「社会のための科学」としてのバイオマス利用研究の位置付けを掲げておられます。一方、第5代部会長の坂西欣也先生の東日本大震災直後のご挨拶(2011年)では、必ずしも社会還元が十分に進んでいないバイオマス利用研究に対する政策見直し、そして再生可能エネルギーの電力固定買取制度の導入に向けた対応等、バイオマス利活用がいよいよ社会の現場と向かい合わなければならない時代になったことが読み取れます。これを受けて、第6代部会長の山本幸一先生のご挨拶(2013)では、固定買取制度と森林資源のバランスの取れた利用のあり方や震災復興の中でのバイオマス利用のあり方を考えて行く場としてバイオマス部会を位置付けております。

 さて、前置きが長くなりましたが、第7代部会長に就任するにあたって、簡単に自己紹介をさせていただきたく思います。この10年程は第二世代のバイオエタノール生産に関する技術開発研究を行ってまいりましたので、多くの方々からはそちらのほうで私を認識されているかもしれませんが、そもそもの私の専門分野は木材をはじめとする森林資源の総合的な利用を考えて行く林産学です。このような立場から、森林資源利用の先進国であるスウェーデン、フィンランド、そしてオーストリア等での木質バイオマスのエネルギー利用に関する現場も見させていただく機会がありましたので、その中で特に印象に残っていることを一つだけ紹介させていただきます。10年程前、スウェーデンのベクショーにある木質バイオマス発電所を訪問した際、当時の所長でありましたUlf Johnsson氏から木質バイオマス利用推進にために必要な3つのポイントを教えていただきました。それは、1)まずビジネスとしての事業として成立していること、2)次に地域住民が恩恵を受けていること、3)そして環境適合性があること、だそうです。そもそもビジネスとして成立する見込みのないものはやってはいけない、と言うのです。また、バイオマスは地域の資源ですので、地域住民が恩恵を受けていないと持続性が担保されないということかと思います。さらに、環境適合性はバイオマス利活用においては必須なのですが、これはあくまで評価として行うものであり、動機として先に持って来るものではないということも理解させていただきました。彼から受けた言葉は、その後、私の脳裏にずっと残っているのですが、皆様はどう受け止められますか。バイオマス部会の中でも、折に触れて、このことについては議論をしていきたいと思っています。さらに、彼から言われたもう一つのことは、「始めたら長く続けなさい」ということです。「何年くらい」と問い返したところ、「まずは20年」という答えが返ってきました。バイオマス利用は農業や林業と非常に密接な関係がありますので、これが物事を考えるための一つの時間的スパンと受け止めるべきかもしれません。

 バイオマス利活用の適切な推進は、我が国、特にそれを支える地方の将来にとって大きな役割を担っているかと思います。また、その中で、バイオマス部会には、そのための研究討議の場として多くの方が大きな期待を寄せていると認識しています。それに応えるべく、部会の活動を通して引き続き発展させて行きたく存じておりますので、何卒、皆様のご協力とご支援を賜りたくお願い致します。


2015年4月吉日


第6代山本会長のご挨拶

第5代坂西会長のご挨拶

第4代堀尾会長のご挨拶

第3代坂会長のご挨拶

第2代山地会長のご挨拶

初代横山部会長のご挨拶


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